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第14回 問題社員への対応策

【納税通信2010年連載】もめない就業規則の作り方(2011.02.21)

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問題社員への対応策

 規程なければ処分はできないか?

結論としては、就業規則に懲戒規程がなければ、原則として社員に対し処分を実施することはできません。過去の判例でも、「使用者が労働者を懲戒するには、あらかじめ就業規則において懲戒の種別および事由を定めておくこととし、就業規則が効力を有するには、その内容を、適用を受ける事業場の社員に周知させるべきである」(最高裁、平成15年10月10日フジ興産事件)としています。つまり、あらかじめ懲戒事由と種類を具体的に規定し、その内容を周知させていないと会社は懲戒権がなく、実行は原則として出来ません。

懲戒事由は法律で決定されているものではありません。企業側で任意に決定できますが、おおよそ以下のような分類で詳細に分かりやすく事由を記載します。

  • 経歴詐称(入社時に申告した学歴や経歴が相違していることなど)
  • 職務怠慢(無断欠勤、遅刻、出勤不良、職場での度重なる離席など)
  • 業務命令違反(業務指示の無視、異動や配置転換命令への違背など)
  • 業務妨害による職場秩序の混乱(けんかや暴力、労働組合による不当なストライキなど)
  • 職場規律違反(セクハラ、情報漏えい、窃盗、会社物品の使用など)
  • 雇用契約に伴う規律違反(無断副業、私生活での犯罪行為など)

懲戒の種類に加えたい項目

就業規則において懲戒の種類として設定されているものには次の5種類が一般的ではないでしょうか。

  • けん責 
  • 減給 
  • 出勤停止
  • 諭旨解雇 
  • 懲戒解雇

これら懲戒の種類に加えたいのが、「降格・降職」です。資格等級を1級下げる、あるいは部長から課長へ職務変更するなどの措置ですが、人事評価制度上での「降格・降職」とは違い、あくまで懲戒処分としての人事権行使ということです。

例えば、懲戒の種類に該当した社員の賃金を下げたいと考えた時、一般的には減給や出勤停止などが選択肢となります。ただし、減給、出勤停止は一時的な賃下げに過ぎず、恒久的な効果を得ることはできません。減給は最大で一回の懲戒につきおおよそ賃金1日分の半額までと労働基準法で決められています。また、出勤停止期間も長くて10日程度という判例が一般的です。

懲戒の程度の状況を踏まえ、ある程度継続的に賃下げをしたい場合、降格・降職の規定を検討する必要があります。仮に「降格・降職」が記載されていない中でその懲戒処分を実施した場合、不当労働行為や人事権乱用として訴訟の火種になる可能性があります。

<規定例>

  • けん責
    始末書を取り、将来を戒めます。
  • 減給
    始末書を提出させ、1回の額が平均賃金の1日の半額、総額が一賃金支払時期における賃金総額の1割の範囲以内で減給します。
  • 降格降職
    職能資格の引き下げもしくは役職を解きます。この場合、労働条件の変更を伴うことがあります。

適用する懲戒事由に柔軟性

例えば、「無断遅刻はけん責とする」という規程では、あくまでその行為者に対してけん責しか実行できません。無断遅刻にしても、それが新入社員なのか管理職なのか、あるいは恒常的なのかどうかなどを鑑みて、与えるべき処分の重さに差をつけるべきです。
懲戒行為に対し実施すべき懲戒事由を決め打ちするのではなく、企業側の裁量権を持たせておくことが重要です。

<規定例>

  1. 次の各号のいずれかに該当する場合は、情状に応じ、戒告、けん責、減給、出勤停止または降格降職にします。ただし、行為の程度が重い場合には、次項に定める処分に処することがあります。
    (1)正当な理由なく欠勤、遅刻を重ねたとき
    (2)過失により災害または営業上の事故を発生させたとき
    (3)第3章に定める服務規律の各規定に違反したとき(軽微なとき)
  2. 次の各号の一に該当する場合は、情状に応じ、諭旨退職または懲戒解雇とします。ただし、平素の服務態度、その他情状によっては、前項に定める処分とすることがあります。
    (1)無断もしくは正当な理由なく欠勤が連続14暦日に及んだとき、または最初の無断欠勤から起算して1年間で通算して14暦日に及んだとき
    (2)正当な理由なく欠勤、遅刻、早退を繰り返し、勤務に誠意が認められないとき
    (3)会社内において刑法その他刑罰法規の各規定に違反する行為を行い、その犯罪事実が明らかとなったとき
    (4)経歴をいつわり、採用されたとき
    (5)故意または過失により、災害または営業上の事故を発生させ、会社に損害を与えたとき

「能力不足」を理由に解雇できる?

就業規則に「能力不足のため解雇する」と記載した場合、無条件で解雇できるのでしょうか。結論としてはただ「能力不足」という理由だけではいきなり解雇は出来ません。過去の判例においても、「単なる能力不足ではなく、企業経営や運営に現に支障・損害を生じ又は重大な損害を生じる恐れがあり、企業から排除しなければならない程度に至っていることを要し、かつ、その他、是正のため注意し反省を促したにもかかわらず、改善されないなど今後の改善の見込みもないこと」(エース損害保険事件 平成13年8月10日 東京地裁)としています。

「能力不足」という主観的事実のみならず、再三のチャンスの付与、教育訓練の実施、改善傾向など解雇回避努力の存在が重要になります。

また、例えばスペシャリスト採用や管理職待遇での採用など特別な雇用契約を締結し、それに応じた高賃金を支給していた場合、期待された能力が発揮されなかったときは「能力不足」を理由とする解雇は認められやすい判例の傾向があります。

解雇の実効性向上のために、解雇規程にこのような考え方を踏まえた条文を記載します。

<規定例>

社員が次の事由に該当する場合は解雇します。

  • 勤務成績または業務能率が不良で、向上の見込みがないとき
  • 勤務状況が不良で、改善の見込みがなく、社員としての職責を果たしえないと認められるとき
  • 経験者として採用したが、本人からの申告を踏まえ会社が期待した職務能力がなかったとき

(つづく)

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【執筆者】
保険サービスシステム株式会社 
保険サービスシステム社会保険労務士法人

社会保険労務士  矢島 秀悟 (やじま ひでのり)

社会保険労務士 矢島 秀悟

「中小企業を守る」を使命として、民間保険・社会保険を一元化したコンサルティング、リスク管理型就業規則の作成、労働基準監督署の是正勧告対応など幅広く労務管理のアドバイスをしている。週間ダイヤモンド・オンラインや納税新聞への記事連載など活躍の場を広げている。

 

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