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第13回 円満退職を実現するルール作り

【納税通信2010年連載】もめない就業規則の作り方(2011.02.14)

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円満退職を実現するルール作り

 会社の「物品」「貸与品」などの返却

会社の物品や貸与品が退職者の所有物になってしまったという話が良くあります。「健康保険証」や「名刺」「事務所の鍵」など物品のみならず、業務において使用していたパソコンや携帯電話、書類やデータ類も必ず返却させます。また、会社の備品である文具類も必ず返却させるルールとし、私物化させない意識作りが大切です。

ただ、物品の返却が全て行われたとしても、企業秘密の漏えいリスクは懸念されるところです。昨今では、USBなどに大量の情報を取り入れることが出来ます。そのような行動をけん制すべく、現職期間中だけではなく、退職後においても秘密情報漏えいの禁止や損害賠償請求を実行する可能性を規定します。

<規定例>

  • 退職または解雇の場合、社章、身分証明書、健康保険証、貸与制服、業務上の書類、ファイル、名刺、その他全て会社から貸与した物、および債務を退職日までに返却、完納しなければなりません。
  • 社員は、例外なく、秘密情報、その他会社が特に秘密保持の対象として指定し、ないし客観的に秘密情報と考えられる情報を第三者に漏えいまたは開示しないものとし、社員が退職した後も同様とします。
  • 職務上で知り得た業務上の機密を外部に漏らし、会社に損害を与えた者には、在職中または退職後を問わず、その損害の程度に応じて損害賠償を請求します。

退職時の引継ぎルールの明確化

退職時に最も問題になるのが引継ぎです。一般的に退職時の社員のモチベーションは低く、会社の要求が通りづらくなります。「立つ鳥跡を濁さず」という意識で引継ぎを行わせるルールが必要です。

まず、退職の申出日を、退職予定日の少なくとも1カ月前とします。この申出期間は、労働基準法上の定めはありません。ただし、民法の準用により「14日前」までに退職の申し出をすれば雇用契約は終了できるとされます。しかし、わずか14日間では、適切な引継ぎは難しいでしょう。退職申出日を退職予定日の1カ月前とすることが公序良俗違反になるかどうか、その法的妥当性についてさまざまな見解があります。ただ、昨今では、企業側の解雇予告通知が解雇日の1カ月前を義務化しているというバランスを踏まえ、退職申し出日を1カ月前とすることを妥当とする見解も増えています。

退職申し出者に対する訓示的な意味も含め、あらかじめ余裕をもって退職の申し出をするルールとします。その際、口頭ではなく退職届として書面で取るようにし、後々「不当解雇だ」など退職理由でトラブルとならないようにします。

そして、引き継ぎ義務があることを就業規則に明記します。適切に引き継ぎをしない場合は懲戒処分を行うことがある旨も明記します。

また、仮に退職金規程が存在している会社であれば、退職金の支給要件として「引き継ぎを適切に完了させること」を記載し、丁寧な引き継ぎの実施を意識付けます。

<規定例>

  • 社員が自己の都合により退職しようとする場合は、少なくとも1カ月前までに必ず書面により申し出をしなければなりません。
  • 退職までの間において、必要な事務の引き継ぎを完了しなければなりません。引き継ぎを適切に完了しない場合は、その状況に応じ懲戒処分を実施する場合があります。
  • 引き継ぎの完了および退職届と退職時の合意書の提出がない場合は、その状況に応じ退職金の全部または一部を支給しません。

退職時に未消化の有給休暇の取り扱い

退職者の当然の心情として、せっかくなので有給休暇の権利を全て行使して退職したいという思いがあります。引き継ぎ義務のルールにより適切に引き継ぎを完了した後、残っている有給休暇を全部取得するという申し出があった場合、会社は拒否できません。出社はしないとはいえ、雇用契約はまだ会社にあるため、一定のリスクは会社に残ります。

また、有給休暇取得により、退職日が翌月にずれ込んでしまった場合、社会保険料を更に1カ月分支払わなければならなり、コスト面での痛手もあります。

対応策として「有給休暇の買い取り」を行います。本来、労働基準法では禁止されていますが、退職時に残っている日数を買い取ることまでは禁止されておらず、その実施は任意とされています。

買い取り金額も法律上特段の定めはなく、退職者との話し合いの上折り合いをつけることとなります。1日あたり5千円から1万円程度が一般的です。

転職制限はどこまで可能か

退職後の競業避止義務は、社員の職業選択の自由を制約し、不利益な内容を被らせることになりますが、必要最小限の合理的範囲内であれば就業規則に定めることにより、一定の有効性は生じます。有効要件を満たすには、以下の観点での妥当性が求められます。

  1. 禁止期間の妥当性
    長期間は権利侵害となります。長くても2年程度と思われます
  2. 禁止地域の妥当性
    営業地域の重複有無などが判断要素となります
  3. 禁止職種範囲の妥当性
    全くの異業種であれば禁止は権利侵害になります
  4. 不利益の代償措置
    不利益に見合った退職金増額などの存在が有効性に影響します

退職者の事情は個別に違います。就業規則での記載のみならず、個別に競業避止に関する誓約書などで対応し、就業規則の実効性を上げます。

<規定例>

【競業避止義務】

  • 退職後は原則として2年間は、本社および支店の所在する隣接都道府県内において、同業へ就職・役員の就任ならびに同業の自営およびそのための準備活動を行わないでください。
  • 社員が在職中および退職後において前項に違反する行為をし、会社が損害を受けたときは、その状況により懲戒処分の実施、退職金の返還及び損害賠償を請求する場合があります。
  • 退職後の競業避止義務を適用する社員とは、制限期間、場所的範囲、制限の対象となる職種、代償措置等を明記した誓約書を締結します。

責任感の強い社員であれば円満な退職を望めますが、無責任な社員による退職により、お客さまからクレームが発生し、信頼を喪失しては大きな痛手となります。労使間でしこりを残さないためにも、退職時のルールを明確化することが重要です。

(つづく)

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【執筆者】
保険サービスシステム株式会社 
保険サービスシステム社会保険労務士法人

社会保険労務士  矢島 秀悟 (やじま ひでのり)

社会保険労務士 矢島 秀悟

「中小企業を守る」を使命として、民間保険・社会保険を一元化したコンサルティング、リスク管理型就業規則の作成、労働基準監督署の是正勧告対応など幅広く労務管理のアドバイスをしている。週間ダイヤモンド・オンラインや納税新聞への記事連載など活躍の場を広げている。

 

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