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第10回 労務リスクを大きく減少させる休職規定

【納税通信2010年連載】もめない就業規則の作り方(2011.01.24)

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労務リスクを大きく減少させる休職規定

有名無実な休職規程にならないために

メンタルヘルス対応を始めとして、近年、相談が増加しているのが、今回のテーマである休職規程です。就業規則を拝見すると、ほとんどの企業で休職規程を設定しています。ただ、その設定方法について、思わぬ労務トラブルが発生しかねないようなルール化をしている会社が多々あります。今回は休職規程における問題点と対応策を解説します。

「休職」とは、社員として労務に従事できない事由が生じた場合に、解雇することなく、労務に復帰できる状況の回復を期待し、その雇用を保持したまま労務に服することを免除する制度をいいます。一般的な休職事由として、傷病による休職、出向による休職、起訴されたことによる休職があります。

冒頭申し上げた通り、休職規程を設定している会社が大半です。社員が病気などになってもすぐ解雇することをせず、いったんは休職とすることで解雇を猶予し、安心して働ける環境を作り、社員との信頼関係を構築するという経営者の前向きな思いから設定している場合もあれば、一方で、ひな型の就業規則を適用し、結果として有名無実な休職規程が存在しているなど理由はさまざまです。

この休職ですが、規定する上で大事な考え方があります。それは、そもそも休職制度は、労働基準法において設定する義務はないということです。つまり、休職制度なしでも、法律違反ではありません。条文上にも「休職」という言葉は存在しません。休職規程を設定するかどうか、また設定する場合、その内容は企業側が自由自在に決定できるということです。

<ポイント

休職制度は、労働基準法において設定する義務はない。そのため、その内容は企業側が自由に設定できる。

この基本的な考え方を踏まえ、まずはそもそも休職規程が必要かどうかを検討することから始めることが重要です。次に、休職規程の作成ポイントは、「休職の実施判断はあくまで会社側の権利となる記載とする」ということです。

よくある規定例として「1カ月間私傷病で欠勤した場合は休職とします」とあります。しかし、この記載では、社員が1カ月間欠勤した瞬間に休職となります。つまり、休職の権利を社員側が持つことになっているのです。これでは、社員から休職の申し出があった場合、それを拒否することができません。

そもそも病気などで長期間働けない社員は、状況にもよりますが、普通解雇事由に該当します。本来は解雇可能性のある社員を、休職制度によって雇用を維持することになります。休職中とはいえ雇用しているということは、社会保険料というコスト、傷病手当金の事務負担、プライベート中の飲酒事故や犯罪など一定のリスクが存在します。

対応策としては、「1カ月間私傷病で欠勤した場合は、休職を命じる場合があります」とし、休職の実施判断をあくまで会社側の権利とします。復帰の可能性がないと会社側が判断した場合は、休職ではなく普通解雇として対応する選択肢を持つことは重要です。

<ポイント>

休職の権利は、会社側が判断できるように規定する。

休職の実施判断同様、復職させる際の判断も会社側の権利となるようにします。「休職期間中に休職事由が消滅したときは復職させる場合があります」という記載にします。復職時のルールとして、医師の診断書の提出を義務とします。ただ、社員が提出する診断書は、どうしても復職したいという思いから、完全に治癒しておらず、社員側に有利な診断書となっていることが往々にしてあります。
よって、疑義が残る場合は、産業医など会社指定の医師の診断書提出を義務付けるルールとしておき、安易な復職を防止します。

<ポイント>

復職は、会社指定の医師の診断書を提出させ、安易な復職を認めない。

仮に休職期間が満了し、復職できない場合の取り扱いとして、普通解雇とするのではなく、「自然退職」とします。
これにより1カ月分の解雇予告手当の支払い義務が生じることを免れることができます。

<ポイント>

復職できない場合は、普通解雇ではなく「自然退職」とする。

大企業の就業規則をひな型にしていると・・・

 監督署や大企業の就業規則のひな形を使用している企業において見受けるのが、休職までの待機期間や休職期間が非常に長いことです。

「業務外の傷病により3カ月を超えて休職したとき」のように、休職に入るまでの待機期間を長く設定している就業規則を見かけます。果たして3カ月間もその社員の様子を見る人員的余裕があるのでしょうか。会社の実情に合わせ、1カ月程度で休職を判断すべきです。

同様に、休職期間も自社で可能な長さを設定すべきです。長くても6カ月以内が妥当と考えます。休職期間も、社員の貢献度を踏まえ、勤続年数別に設定することも検討に値します。その意味で、勤続1年未満の新入社員には、休職制度から除外することも自然なことです。休職までの待機期間、休職期間は自社で可能な長さを設定することが重要です。

<ポイント>

「休職までの待機期間」「休職期間」は、自社で可能な長さに設定する。

休職規程で意外とトラブルになるのが、休職期間中の社会保険料です。休職期間中に賃金を一切支払わなかったとしても社会保険料の負担は生じます。休職期間中は賃金の支払いがないため、控除することはできません。毎月会社に支払ってもらうか、復職時に一括あるいは分割して支払ってもらうかなど徴収ルールを明確化すべきです。現実的には復職時の一括支払は負担が大きいので、定期的な会社への支払になろうかと思います。

最後のポイントとして、休職事由が再発した場合のルールを明確化してください。休職制度を悪用して、何度も休職や復職をする社員を存在させないよう、同一傷病や同一に近いと思われる傷病での休職は原則として認めないものとします。

<ポイント>

休職制度の悪用を排除するため、休職事由が再発した場合のルールを明確化する。

何度も申し上げていますが休職制度は法律上決められたものではないため、会社側でそのルールは自由に設定できます。
会社の実情を踏まえ、身の丈にあった休職制度となっているか、確認してください。

(つづく)

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【執筆者】
保険サービスシステム株式会社 
保険サービスシステム社会保険労務士法人

社会保険労務士  矢島 秀悟 (やじま ひでのり)

社会保険労務士 矢島 秀悟

「中小企業を守る」を使命として、民間保険・社会保険を一元化したコンサルティング、リスク管理型就業規則の作成、労働基準監督署の是正勧告対応など幅広く労務管理のアドバイスをしている。週間ダイヤモンド・オンラインや納税新聞への記事連載など活躍の場を広げている。

 

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