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第07回 残業代対策に潜む意外な落とし穴〜その2

【納税通信2010年連載】もめない就業規則の作り方(2010.12.27)

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残業代対策に潜む意外な落とし穴〜その2

専門業務型裁量労働制の落とし穴

近年の経済の高度化やサービス化 の進展に伴い、業務の性質上、業務 遂行の手段や方法を社員の裁量に委 ねるケースが増えてきました。そのため、会社の具体的指示がなじまず、 労働時間の算定が適切ではない業務が増加していることを背景に、労働 基準法では「専門業務型裁量労働制」 を制定しました。

同制度は、法律で定められた19業 務を対象として、社員をその業務に 就かせた場合、労使協定で定めた時間を労働時間としてみなす制度で す。

代表的な対象業務は以下になります。

  • 新商品、新技術の研究開発またはその他の研究業務
  • 情報処理システムの分析または設計業務
  • 取材または編集業務(新聞、出版、 放送番組制作限定)
  • 衣服、室内装飾、工業製品、広告 など新たなデザイン考案業務
  • 放送番組、映画、イベント等のプ ロデューサーやディレクター業務
  • コピーライター業務
  • ゲーム用ソフトウェアの創作業務
  • 税理士、公認会計士、中小企業診 断士、不動産鑑定士、弁理士業務

労使協定で1日8時間労働をすると見なすと定めた場合、1日12時間 労働しても、逆に5時間しか労働しなくても、1日8時間労働したもの
と見なします。対象社員の労働時間管理が容易になり、また長時間労働が恒常化している社員に対しては有効な残業対策になります。

注意しなければならない落とし穴は、その対象業務です。
例えば「情報処理システムの分析または設計業務」とありますが、 具体的には

  1. ユーザーの業務分析に基づいた最適な業 務処理方法の選定
  2. システムの設計や評価、問題点の発見、その解決のための改善業務

などを指しています。

しかし、プログラムの設計や作成を行うプログラマーは対象外です。
また、「衣服、室内装飾、工業製品、 広告など新たなデザイン考案業務」とありますが、考案されたデザインに基づき、単に図面の作成、製品の
製作を行う者は対象外です。

「税理士」や「中小企業診断士」などの士業も、その資格を保有しているだけでは対象外です。実際にその資格に関する専属業務を実施している者が対象です。税理士事務所に勤務している職員の方は対象が少ないように思います。

つまり、専門業務型裁量労働制対象社員は、アイデアを創出する者が対象で、作業者は対象外です。

プログラマーは、会社から指示されたシステムの作成業務という作業の遂行者という考え方です。業務遂行の手段や方法を社員の裁量に委ねる必要がなく、労働時間管理を実施でき、会社の具体的指示を及ぼすことが適当であるということです。

このように、現実的には法律で認められる対象社員は限定的です。導入に際しては、対象業務に該当するかどうか十分な検討が必要です。

管理監督者の落とし穴

「うちの会社の課長以上の職位には残業代を支給していません」。
労働基準法第41条では、管理監督者について、労働時間や休憩、休日に関する法律の適用を除外しています。

つまり、残業代支給義務がありません。

会社側のとしては、なるべく多くの役付社員を「管理監督者」扱いにして、残業代リスクを軽減しようと考えます。
この考え方に落とし穴があります。
結論から言えば、会社で設定する「管理監督者」と法律で残業代が免除される「管理監督者」は全く違います。 日々多くの経営者とお話ししますが、「管理監督者」の定義についてほとんど法律の考え方に合致していません。 労働基準法や過去の労働判例を見ると、残業代が免除される「管理監督者」の判断基準を表のように示しています。

つまり、表の3要件を充足し、経 営者と同様の立場にあり、客観的にみて労働時間、休日などについて法律によって厳格な制限ないし規制を加えず、法の対象外に放置しても労働者保護に欠けるところがないと認められる者である。「管理職手当を支給している」「課長に昇格した」 という事実のみでは、いわゆる「名ばかり管理職」であり、法律のいう「管理監督者」に該当せず、残業代の支給義務が生じます。

最近の判例では、管理監督者を否定するケースが相次いでいます。
最近では日本マクドナルド事件が記憶に新しいところです。この判例では「店長という立場ではあるが、店舗の人事考課や評価を行っていたとい えども、労務管理に関して経営者と一体的立場にあったとはいえない、会社経営に直接関わる重要な業務と権限を付与されていない、労働時間 の決定に裁量が十分にないこと、賃金の待遇が十分であったとはいえない」という観点から、店長の管理監督者を否定されています。
その意味では、中小企業において、法律の要件を充足する管理監督者の存在は、極めて限定的であると考えます。

例えば、役職手当も定額残業 代としての意味を雇用契約上含めるなど、残業代不払いリスクを未然防止することが重要です。

【表】 <管理監督者の具体的基準の考え方>

  1. 企業の経営方針、労務人事管理方針の決定、労働条件の設定等に参加できること。社員の統括と管理、業務や労務取扱い上の裁量事項の決定と命令又は 承認を行う。
  2. 自己の勤務について自由裁量権限があり、出勤、退出について就業規則上のおよび実態上厳格な制限を受けない地位にあること。タイムカードにより出勤、退出が管理され、他の社員と同様に規制されている者は管理監督者とはいえない。
  3. 賃金などの待遇面において、その地位にふさわしい処遇がなされていること。その額は下位の非該当職制に比し相当高額であり、下位者に支払われている平均的割増賃金相当額との比較からも考慮すべきである。

(つづく)

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【執筆者】
保険サービスシステム株式会社 
保険サービスシステム社会保険労務士法人

社会保険労務士  矢島 秀悟 (やじま ひでのり)

社会保険労務士 矢島 秀悟

「中小企業を守る」を使命として、民間保険・社会保険を一元化したコンサルティング、リスク管理型就業規則の作成、労働基準監督署の是正勧告対応など幅広く労務管理のアドバイスをしている。週間ダイヤモンド・オンラインや納税新聞への記事連載など活躍の場を広げている。

 

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