保険サービスシステム株式会社、保険サービスシステム社会保険労務士法人

03-3591-1515

(大阪)06-6456-0157(名古屋)052-219-2333

第06回 残業代対策に潜む意外な落とし穴〜その1 

【納税通信2010年連載】もめない就業規則の作り方(2010.12.20)

≪前の記事  |  目次  |  次の記事≫

残業代対策に潜む意外な落とし穴〜その1

「うちの会社は課長に昇格したら残業代の支給はありません」。

企業は残業代コストを削減すべく、法律の中でさまざまな手を打ちます。
ただ、その中には数多くの誤解やリスクがあると感じます。

今回は、世間一般的に語られる残業代対策に潜む意外な落とし穴を解説します。

事業場外みなし労働時間制の落とし穴(1)

営業担当者や外交員など、一般的に労働時間の算定や管理が非常に困難です。
そこで労働基準法では労働時間の算定を適切に行うため、以下のように事業場外みなし労働時間制を規定しています。

労働者が労働時間の全部または一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難い場合は、所定労働時間労働したものと見なす。

つまり、1日の労働時間が何時間であっても、みなし労働時間制対象社員は、所定労働時間のみ労働したものと算定できるということであり、残業が一切発生しないということです。社員側がいくら労働時間のメモなどで残業代を訴えても認められないことになります。

この制度の趣旨を捉えて、営業担当者などにこの制度を導入している会社が多々あります。
しかし、ここにまず落とし穴があります。労働基準法の通達で、対象にできない業務を以下のように定義しています。

  • グループで事業場外に従事する場合で、そのメンバー内に労働時間管理をする者がいる場合。
  • 無線やポケットベル等によって随時会社の指示を受けながら事業場外労働をしている場合。
  • 事業場において、訪問先、帰社時刻等当日の業務の具体的指示を受けた後、事業場外で指示通りに業務に従事し、その後事業場に帰社する場合。

法律の趣旨として、会社の指揮や労働時間管理を受けず、業務の性質上労働時間の算定が難しい業務を対象としています。事業場外みなし労働時間制の導入を合法的にするには、タイムカードや行動予定表、業務日報などで時間管理や行動管理をしない、訪問先での打ち合わせに関してその時間や方法を指示しない、携帯電話を通じて営業中も随時指示したり報告させたりしない、など事業場外労働について会社側が一切管理やコントロールをしていない実態が求められます。

みなし労働時間制の適用をめぐる裁判でも、その導入を否定されるケースが相次いでいます。


■みなし労働時間適用をめぐる判例

<判例1> 書籍販売会社の営業社員における展覧会場での展示販売業務に関して

ホテル等で絵画の展覧会を開き、会場において営業社員が絵画販売に従事したことにつき、

  1. 従事する時間、場所は限定されている
  2. 支店長も参加
  3. 会場内の勤務は顧客への対応以外の時間も顧客への来訪に備えて待機しており、休憩時間とは認められない

上記より、労働時間の算定は容易で、みなし労働時間の適用は否定。

<判例2> 情報誌の営業社員の事業外営業活動

訪問先への営業活動に関し、会社は具体的指示をしないが、

  1. 訪問先における訪問時刻と退出時刻を報告するという制度で管理されていること
  2. 社員が事業場外における営業活動中に、その多くを休憩時間に充当でき、自由に使える裁量はない。事業場を出てから帰るまでの時間は、就業規則上与えられた休憩時間以外は労働時間であるということができる。

上記より、労働自体については会社の管理下にあり、労働時間の算定は困難ではないとしてみなし労働時間の適用は否定。

残業代対策として非常に有効である事業場外のみなし労働時間制ですが、その導入については、対象社員について労働時間管理や業務管理を一切放棄しても良いのかという点を、経営として十分に検討しなければならないことになります。

事業場外みなし労働時間制の落とし穴(2)

もう1つの落とし穴として、労働時間の一部に「事業場内労働」が存在する場合です。
法律の原則としては、事業場内と外を含めて、1日の所定労働時間と見なします。ただ、「事業場外労働」のみで常に所定労働時間を超過しているような会社の場合、みなし労働時間の導入には社員の反発が大きいことが予想されます。

そこで、みなし労働時間を「所定労働時間」ではなく、「通常必要とされる時間」として、労使協定を締結の上、導入する会社があります。
例えば、所定労働時間は7時間30分だが、「通常必要とされる時間」として法定労働時間である8時間として設定するなどです。
このような設定をしている会社は注意です。
この場合、「事業場内労働」が別に存在すると、その時間を「通常必要とされる時間」に加えることになります。

以下に図示します。

(1)所定労働時間と見なす場合(所定労働時間7.5時間の例)

7.5時間と見なす


(2)「通常所定労働時間を超えて労働することが必要な時間」と見なす場合(通常時間8時間とした場合)

11時間と見なす

営業を終了し、帰社後内勤での事務や打合せなどが存在すると、その時間は別に時間外労働として算定しなくてはなりません。

リスクはそれだけではありません。

仮に事業場外労働が「5時間」で終了し、事業場内労働「3時間」を含め1日の労働時間が8時間で終了しても、あくまでみなし労働時間は「8時間」なので、その日の労働時間は「11時間」になります。

みなし労働時間導入後についても、労働時間算定についてこのような考え方がありますので注意が必要です。

(つづく)

このサービスのお問合せ東京:03-3591-1515 大阪:06-6456-0157

【執筆者】
保険サービスシステム株式会社 
保険サービスシステム社会保険労務士法人

社会保険労務士  矢島 秀悟 (やじま ひでのり)

社会保険労務士 矢島 秀悟

「中小企業を守る」を使命として、民間保険・社会保険を一元化したコンサルティング、リスク管理型就業規則の作成、労働基準監督署の是正勧告対応など幅広く労務管理のアドバイスをしている。週間ダイヤモンド・オンラインや納税新聞への記事連載など活躍の場を広げている。

 

ページの先頭へ

 
©2017 Hoken Service System Co., Ltd. All Rights Reserved.