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第05回 残業代不払いを解消する賃金規程〜その4

【納税通信2010年連載】もめない就業規則の作り方(2010.12.13)

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残業代不払いを解消する賃金規程〜その4

残業代単価の計算方法については、さまざまな中小企業の就業規則を見ても、法律に合致していた企業は10社に1社程度です。この残業代不払い問題の意外な落とし穴である残業代の単価計算について、今回は合法的にその単価を減少させる方 法と、単価計算に使用する賃金についてポイントを解説します。

「休日」を「休暇」にすることで 残業代単価を減少

前回も記載しましたが、残業代単 価の計算式は次のようになります。

法定の割増賃金計算式

法律上設定できる最大の所定月間労働時間は「173時間」です。この「173時間」を合法的に設定出来れば残業代単価が減少します。

ただ、前回記載しましたが、ほとんどの企業は分母を「173時間」に法律上設定出来ません。設定を可能にするには、年間所定労働時間を法律上の最大である「2085時間」にする必要があります。そのためには、1日の所定労働時間に応じて、労働日と休日を以下の表1のようにすることです。

表1

1日の所定労働時間が8時間の場合、労働日設定の根拠は次のような計算から導かれます。

2085(時間) ÷ 8(時間) = 260(日)

つまり、1日の所定労働時間が7時間30分の会社は、今後休日を87日にします。ただ、いきなり社員に、「今日から1年間、休日を87日します」と伝えても、ほぼ同意は取れないでしょう。1年間は約52週ですから、完全週休2日だけでも年間104日の休日です。今後は土曜日については隔週で出勤し、祝日や夏休みも出勤ですということです。

そこで、是非導入を検討したいのが「休暇」です。「休日」と「休暇」。この2つの言葉の意味は全く同じように思えますが、法律上では意味が異なります。まず、「休日」とは労働義務が無い日です。労働基準法で は、1週につき最低1日休日を付与する義務を与えています。

一方「休暇」とは、本来労働義務はあるものの、会社側がその義務を免除した日のことをいいます。もともと出勤日ではあるが、会社側が出勤はしなくて良いと認めた日です。つまり、「休暇」は労働日です。

このことから言えることは、社員を思って「休日」を増やすとそれだけ年間の所定労働時間が減少し、残業代計算の分母である月平均所定労働時間が小さくなることで、残業代単価が大きくなります。

それに対して、「休暇」は本来労働日であり、会社側がその労働を免除したに過ぎないので年間の所定労働時間に変更は生じません。よって、残業代単価に影響はありません。

「休日」を「休暇」に変更することは、社員から同意も取りやすいと思います。社員からすれば「会社が休みである」という事実は変わらないからです。

表2に、一部土曜日と夏季、年末年始の休日、国民の祝日を「休暇」とした場合のシミュレーションを例示します。

休暇日を入れたシミュレーション

正しい残業代単価計算の賃金

次に分子である賃金の話です。中小企業の特徴は、基本給はそれほど大きくなく、手当の数が多いことです。特に運送業では、10種類ぐらい手当がある会社もあります。ここでは手当の多さが問題ということではなくて、どの手当を残業単価に算入するかを整理する必要があるということです。

給与項目の中で、例えば基本給、乗務手当、営業手当、役職手当、皆勤手当、交通費があるとします。この中で残業単価の計算から除外可能な手当はどれかと経営者の方にご質問しますと、正解率は2割程度です。答えは交通費だけです。交通費以外の手当を外すと分子を小さくしてしまっているので、計算間違いによる残業代不払いとなる可能性が高くなります。

労働基準法で、残業単価計算から除外可能な手当は決まっています。逆に言えばその他の手当はどんな名称であれ外せません。外していい手当は家族手当、交通費、賞与、住宅手当です。法律では細かくもう少しありますが、覚えていただきたいのはこの4つです。

ここで注意が必要なのは、各手当の支給ルールです。例えば住宅手当を例にとってみます。住宅手当というのが、定率で出しているのか定額で出しているかによって分かれるのですが、家賃に対して定率で支給している場合は全く問題ありません。

例えば、家賃の10%を支給する場合です。家賃10万円の人だったら10万円、8万円の人は8千円という形で、金額がそれぞれ社員によって変動する手当であれば問題ありません。一方、残業代単価削減目的で、住宅事情に関わりなく全員一律住宅手当1万円を支払っているというような場合、残念ながら残業単価計算から外せないことになります。つまり、各手当の支給の趣旨として、住宅手当であれば住居費用に応じて支給する手当、家族手当であれば扶養家族が存在することによる一部生活保障という意味としてルール化することが、残業代単価計算から除外できる要件です。労働基準監督署は、この要件も厳格にチェックしてきますので注意が必要です。

(つづく)

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【執筆者】
保険サービスシステム株式会社 
保険サービスシステム社会保険労務士法人

社会保険労務士  矢島 秀悟 (やじま ひでのり)

社会保険労務士 矢島 秀悟

「中小企業を守る」を使命として、民間保険・社会保険を一元化したコンサルティング、リスク管理型就業規則の作成、労働基準監督署の是正勧告対応など幅広く労務管理のアドバイスをしている。週間ダイヤモンド・オンラインや納税新聞への記事連載など活躍の場を広げている。

 

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