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第03回 残業代不払いを解消する賃金規程〜その2

【納税通信2010年連載】もめない就業規則の作り方(2010.11.29)

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残業代不払いを解消する賃金規程〜その2

定額残業制導入により、大幅な残業代削減が想定されますが、前回説明したとおり、定額の残業代として支払う金額に相当する時間を超過して残業をした場合、その超過した時間分の残業代を別途支給する義務があります。特にサービス業や運送業、IT関連業など、一般的に長時間労働が恒常化している会社では、定額残業制の残業時間枠に収まりきれないケースをよくみかけます。

このような悩みを抱える会社に対して、朗報ともいえる画期的な判決があります。

S社事件(東京地裁 平成21年)という判決なのですが、この判決では残業代の不払いリスク解消などにつながるいくつかの要素が入っているのです。
判例によれば、S社は「定額残業手当」に関し、ルールとして(1)残業代の前払いであること(2)実際発生した残業時間に比べて定額残業手当が超過した場合(つまり過払いしている状態)、その超過分を翌月以降に繰り越すことができる、と給与規程に記載していました。

これらルールについて判例では、超過分の繰り越しを認めています。
同制度導入のメリットは、労働時間が短時間である月の残業時間不足分を翌月以降の超過分発生時の穴埋めをすることができ、より一層の残業代不払いリスク解消を期待できることです(下図参照)。

【図】定額残業手当を計算上月間50時間分支給している場合


また、賞与についても定額残業代としての意味を持たせることも可能です。
その導入方法としては以下の通りです。

  1. 賞与は残業代の前払いであることを給与規程に記載し、社員に周知させること
  2. あくまで残業の前払いであることが法的に認められることであり、例えば7月に支給する賞与は、過去の残業の清算ではなく、8月以降一定期間の残業代の前払いであることをルール化する。

上記の残業代の繰り越し制度と併せて、毎月の定額残業手当のみでは残業代をカバーできない会社においては有効な手段です。

最低賃金法に注意する

ここまで、定額残業制の規定化のポイントをお話ししましたが、留意しなければいけない点は、いわゆる「最低賃金法」です。
残業代などを除外した基本給ベースで計算したときに、法律で定められた最低限の時給を上回らなければなりません。平成22年10月現在、東京都では821円(業種によっては高く設定されていますので注意)となっています。
月の所定労働時間が160時間とすると821円×160時間=13万1360円が設定可能な最低の基本給となります。
ただ、今後の法改正の動きを踏まえますと、最低賃金額は上昇傾向にあると思われます。最低限ギリギリの基本給設定では法改正の都度ルールの変更を求められますので、ある程度余裕のある金額の設定を行いましょう。

残業代不払いリスクを解消するための手段として注目されている定額残業制ですが、いざその導入局面になると経営者の方は悩まれます。

「定額残業制の導入は、社員にとって不利になる労働条件の変更だから、説明が困難で理解が得られるか不安だ。逆に寝た子を起こされるのではないだろうか」。

確かに定額残業制導入は労働条件の不利益変更です。社員に対し合意のない不利益変更は、法律上原則として無効とされる可能性があります。上記で申し上げたS社事件におきましても、給与規程や雇用契約書、および給与明細においても定額時間外手当は残業代の前払いという記載を明確にし、合意や周知の事実を裁判では重要視しています。

経営側は社員に対して、合意を得られるような説明が求められるわけですが、その基本理念として私は次のように考えています。


定額残業制でリスク回避

会社で支給可能な賃金総額は決まっています。
その中で、残業代という労働時間の多寡によって決定される賃金を配分するのではなく、業績や能力、会社への貢献度で賃金を決定し配分したいということが経営者の考えではないでしょうか。
また、社員側から見ても、「仕事が速く優秀な社員」よりも単に「長時間働く社員」の方が賃金上では優遇され、それが社員間の不公平感を招き、結果としてモチベーションの低下を引き起こすことになります。

この人事労務上のジレンマを解決する一つの手段が、この定額残業制です。

定額残業制導入の本質とは、単に残業代不払いリスクへの対応、あるいは賃金コストの削減という側面のみではなく、公正な人事評価の仕組みを構築していく手段でもあると考えます。
このような考え方を、社員説明会の場に呼ばれた際にはコメントし、定額残業制導入にあたり生じる可能性のある労使間の認識の差を埋めます。 そして、定額残業制導入に関し、社員全員から雇用契約書を取り付け、書面として労使合意の証を丁寧に残しておきます。

(つづく)

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【執筆者】
保険サービスシステム株式会社 
保険サービスシステム社会保険労務士法人

社会保険労務士  矢島 秀悟 (やじま ひでのり)

社会保険労務士 矢島 秀悟

「中小企業を守る」を使命として、民間保険・社会保険を一元化したコンサルティング、リスク管理型就業規則の作成、労働基準監督署の是正勧告対応など幅広く労務管理のアドバイスをしている。週間ダイヤモンド・オンラインや納税新聞への記事連載など活躍の場を広げている。

 

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