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第02回 残業代不払いを解消する賃金規程〜その1

【納税通信2010年連載】もめない就業規則の作り方(2010.11.22)

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残業代不払いを解消する賃金規程〜その1

前回は、元社員からの申告により労働基準監督署の臨検を受け、残業代不払いの是正を受けた運送会社A社の事例をお話ししました。
社長のBさんはただ驚くばかり。B社長は「残業代はきちんと支払っている」と主張しましたが、なぜ通用しなかったのでしょうか。
B社長の具体的主張は次の通りでした。

「ドライバーは、業務の開始と終了がよく分からないし、休憩時間もあいまいで、仕事上どうしても労働時間が長くなることが多いので『乗務手当』を支給して残業代としています」。

A社のような発想で、現在支給している手当をいわゆる「定額残業代」として残業代を前払いしていると認識している経営者も多くいらっしゃいます。しかし、ここで意外な落とし穴があります。
労働基準監督官は臨検の際、必ず賃金規程を確認します。そこには、乗務手当に関し、「大型車両ドライバーに支給する手当です」などのような記載であるケースをよく見受けます。
しかしこの条文を見た監督官は、間違いなくこういいます。

「乗務手当はまったく残業代ではありません。残業代不払いの状態です」。

このようなA社のケースのみならず、「基本給に残業代を含んでいる」「年俸制を採用していて、残業代を含んで支給している」など、さまざまなケースで監督官から残業代不払いの主張を受けます。
ちなみに、監督署の指導といっても、社員からの申告ではなく、監督署の任意臨検の場合は、過去数カ月の残業代遡及(そきゅう)支払で完了することが一般的です。
しかし、今回のA社のような申告臨検や、指導に従わず改善報告の提出要請を拒否した場合、賃金の請求時効である過去2年分の残業代支払まで遡及したり、悪質事業者として書類送検される可能性があります。労働基準法第119条を根拠とし、「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」が課せられます。

A社のように残業代不払いを防止すべく、諸手当を残業代の前払いとしていたにもかかわらず不払いとされてしまっては、経営者としてはやりきれない気持ちになるでしょう。


<みなし残業を容認している判例>

関東プレハブ事件…………………(東京簡裁 S40.7.15)
高田機工事件………………………(大阪地裁 S50.3.31)
三好屋商店事件……………………(東京地裁 S63.5.27)
日本アイティーアイ事件…………(東京地裁 H09.7.28)



労基署の判断ポイント

労働基準監督官は、「定額残業代」として適切に残業代を前払いしているかどうか、以下の観点から判断します。

  1. 「乗務手当」などが定額残業代としての労働条件、雇用契約となっており、労使間で認識していること。
  2. 定額残業代とそれ以外の通常の労働時間に対する賃金(基本給など)が明確に分かること。
  3. 支払われた定額残業代が、実際に行った残業時間を労働基準法の計算により割増賃金の額を算出し、その額を下回っていないこと。
  4. 実際に行った残業時間が定額残業代分として計算される残業時間を超えた場合は、超過分を別途適切に支払っていること。

このような観点を踏まえ、対策としていくつかポイントがあります。

対策のポイントはココだ!!

1つ目は、「乗務手当」を「乗務時間外手当」と名称を変更します。
そうすることで、社員のみならず対外的にも「乗務手当」は残業代を含んだ手当であると客観的に認識させることができます。

2つ目は、賃金規程に「乗務時間外手当は残業代である」という旨の記載をしてください。
具体的な記載例としましては、「乗務時間外手当はあらかじめ時間外割増、休日割増、深夜割増として支給する手当です」のような記載としましょう。このように記載することで、休日や深夜労働に対する割増賃金も、残業代と併せて定額の中に含むことができます。
その際、「乗務時間外手当」にはそもそも何時間分の残業代として支給しているのか賃金規程上で社員に明示する義務は実はありません。むしろ、明示しないことを推奨します。 なぜならば、賃金規程上で例えば「残業30時間分の定額残業代」などと記載すると、対象全社員に対し、「残業30時間分」を一律に設定しなければなりません。
社員間では業務量や能力の差があることが一般的で、それに伴い残業時間も相違します。賃金規程上では、例えば「一定時間」などの言葉で表現することで、社員別に設定する定額残業代に含める残業時間に区別をつけることが可能です。
また、賃金規程上に残業何時間分かを具体的に記載してしまうと、今後想定される残業時間が変化し、前払いとする残業時間を変更する度にわざわざ賃金規程の変更として社員の意見書を添付して監督署へ届け出なければなりません。

3つ目として、この定額の残業代として支払う金額に相当する時間をさらに超過して残業をした場合、その超過した時間分の残業代を別途支払う旨明示することです。
一例として「時間外超過手当」といった名称の手当を作成し、「乗務時間外手当の支給を受けているものが一定時間を超えて更に労働した場合、その時間分に対する残業代を別途時間外超過手当として支給します」といった記載が検討できます。

(つづく)

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【執筆者】
保険サービスシステム株式会社 
保険サービスシステム社会保険労務士法人

社会保険労務士  矢島 秀悟 (やじま ひでのり)

社会保険労務士 矢島 秀悟

「中小企業を守る」を使命として、民間保険・社会保険を一元化したコンサルティング、リスク管理型就業規則の作成、労働基準監督署の是正勧告対応など幅広く労務管理のアドバイスをしている。週間ダイヤモンド・オンラインや納税新聞への記事連載など活躍の場を広げている。

 

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